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書道

三千年以上の歴史を持つ「書」の世界
「書」の魅力を、フランス人の私から
日本そして世界のみなさんへお伝えします

和魂への道程

フランス北部、ベルギー近隣の小さな町に生まれ育った私ですが、将来、日本に住むことになるとは夢にも思いませんでした。ところが、十六歳の時、空手道に魅了された事がきっかけとなり、ほどなく日本は憧れの地となりました。そして「本場で武道の修業を」の一念で、平成八年に文化活動ビザを得、来日することができました。その後、日本の伝統文化をもっと幅広く知りたいと思い、平成十年に書道を習い始めたのですが、少しずつ筆に慣れていくうちに、想像もできなかった世界が目の前に広がってきました。三千年以上の歴史を持つ「書」の世界に遊び、数々の文字と出逢い、過去から今までの人間の多様な表現力にただ感動するばかりです。筆を握って書くという実感、そして白紙に投影される今の自分:そんな“はたらき”を秘めた「書」はすでに自分の生活の一部になっているだけでなく、我々現代人の心をも豊かにしてくれているような気がしてなりません。

デモストレーション

2014年、「煎茶道と書道」というイベントが開催された際、揮毫する様子です。
会場の雰囲気、人たちに囲まれながら白い紙を反映する自分自身と向き合う重層的ともいうべき時空となります。その時はその拙(=素朴さ)を養う「養其拙」を篆書で表現してみました。

実家の写真

静岡県芸術祭書道部門に初めて出品し初入選となった作品をフランス北部に住んでいる親にプレゼントしました。150年以上前に建てられた実家は、天井の高さが3.5メトル近くもあり、そこに飾られた縦の掛け軸が見事にその空間を活かします。書体の隷書は洋風のスペースに違和感なく溶け込み、部屋全体に落ち着きを与えることに驚きました。

新築祝いの作品「喜楽」

知り合いの夫婦から次男の新築祝いに書道の作品の依頼を受けました。言葉は昔の実家の屋号「喜楽」を中国青銅器時代の金文で書いてほしいとのこと。サイズは玄関に飾る額入りの作品。なんて魅力的な依頼!書で表現する者にとって、日常空間に自分の書を飾って下さるのはそれ以上嬉しいことはないと思います。さっそく知り合いの子供の新築の玄関を見せてもらい、その空間に「気」を与えるような作品に取り組みました。こんな風に「書」は人と人をつなげる役割を果たしてくれるのです。
その後、長男の新築祝いにも「喜楽」を書かせてもらいました!(写真)

キブロン半島のアパート

私の第二の故郷、フランス西部のブルターニュ地方にあるキブロン半島。大西洋に面しているアパートに一文字の書作「窓」が飾ってあります。実は3文字の大作の中から一文字「明」の一部を切り取って作った、かなり斬新な一品。「明」という漢字は今では旁が「日」になっているのですが、元々は「窓」でした。「窓」は内の世界と外の世界を繋げ、特に外の光が入ってくるよう、大事な働きをしてくれます。このような隙間は気の流れを良くし、私たちが「深呼吸」できる居心地の良い空間を促してくれます。